皆さんこんにちは。
NPO法人ソシオの杜です。
今回は、「婦人保護施設での取組み」後編をお伝えいたします。
5名の利用者への具体的な施術内容についてご紹介していますので、「心と身体をケア」するというソシオエステティック理念を感じていただけると思います。
概要は次のとおりです。
- 《場 所》 婦人保健施設
- 《頻 度》 2013.10~ 継続中
- 《対象者》 施設入所者
- 《内 容》 ハンドトリートメント、ネイル、メイク
- フェイシャルトリートメント、ボディトリートメント
目次
事例⑥ 婦人保健施設での取組み
Aさんの事例
- 風俗で働かされていた
- 軽い知的障害あり
- とても地味な方 40代
- 前髪で顔を隠す
- 小さいぬいぐるみをバッグにたくさんつけていつも持っている
ソーシャルワーカーの方に勧められて参加するも
「私はどこにも行かないし、誰も見ていないから化粧はいらないです」
暗い表情でぼそぼそと話す。女性としてのの身だしなみもない状態。
ご自分を卑下している様子がうかがえる。ハンドマッサージのみ。
ご自分から
「今日は顔をマッサージしてください」
フェイシャルマッサージの間中、ずっとご自分の気持ちについてお話してくださった。
「私は人と付き合うのが苦手だからずっと部屋に入ってばかりいた」
「織物をしている時だけ、誰の声も耳に入ってこなくなって気持ちが楽になる。だから織物をしている時が好き」
というような、施設で暮らす中での素直なお気持ちをお話してくださった。マッサージによって少し心を開いてくださったのを感じた。
これからハローワークに行くところだったので、
「顔色が良く見えるから軽くお粉とほほ紅をさしてみましょうか」
と言ったら素直に「はい」と応じてくださり、初めてメイクをさせていただけた。恥ずかしそうにしていたが、嬉しそうなお顔だった。
就職したが、すぐに辞めてしまったということで少し気持ちが落ち込んでいた。
フェイシャルマッサージを受けてくださったが終始無言。
辛い気持ちを癒すように施術した。
ご自分からこちらに来て下さり、新しい就職が決まり、その内容など積極的にたくさんお話してくださった。
私の両手を取って、わたしの目をまっすぐ見てくださり、今まで見たこともないような笑顔で
「先生、就職が決まったんです!」
「ネイルサロンの裏方なんだけど、爪に色をつけてはいけないんです!だから今日は爪磨きだけしてください。」
と、声も明るく表情がいきいきと話してくださった。
スタッフの方に
「こんなAさんは見たことがないし、〇〇さんとの会話している明るい姿にも感動しました。」
と言われた。
数年して自分で生活できるようになり退所。
Bさんの事例
- 軽い知的障害あり
- 20代
- ハンドマッサージとネイル(爪磨き・カラーとシール)を希望
- リストカットの傷の跡 多数あり
手のマッサージでは腕全体の震えが止まらないので極力ゆっくりとマッサージをする
言葉は少ないが、自分のことを明るく話す。
とても礼儀正しい
「先生の手があったかい」と話す
ネイルの仕上がりを素直に喜ぶ
Cさんの事例
- 親戚の人からの性的暴力
- 風俗 売春の経験あり
- 40代
辛い過去をいっさい感じさせない明るい方
女性らしい面が多く、きれいになりたい気持ちが強い
メイク、ネイルなど特にご希望され、自分の話をずっとしている
お話好きで私達と話すことで発散することも多く、社会ともつながっていたいという願望を感じる
きれいになることで自分が満たされ満足されているようだった
ソシオの日をいつも待っていてくれた方
施設から出たい気持ちが強く、精神病院に入院中に退所された
Dさんの事例
- パートナーに身体的精神的暴力を受け歯がない女性
- 50代
自分のことはほとんど話さず、初めはあまり会話をしたがらなかった
ハンドトリートメントから始まり、慣れてくると徐々にネイル・メイク・フェイシャルマッサージもご希望されるようになった
特にフットケアの講習を受けた時、ご自分の足がとてもきれいになったことを喜んで、自分をいたわり気にするようになった
それまでは足の乾燥が激しく汚れも気にされていなかったが、講習でお渡ししたフットケア用品で自分でもケアするようになった
だんだんと心を開いてくださり、今は心から安心されてボディケアも受けてくださっている
ソシオの日をいつも楽しみにしてくださっている
Eさんの事例
- 20代
- 10代で施設に入り施設の中で最年少だった
- 軽い知的障害あり
- 手の指や腕、脚などタトゥーが入っている(母親に入れられたそう)
- 母親に売春させられていた
ネイルやフェイシャル・メイクなど積極的に様々ご希望
その日によって甘えたり硬い表情だったりするが基本的には明るくとても社会性があって活動的な方
いつも様子を伺い、人によって態度を変えることがあった
外部の私達には、いつも良い顔をみせようとしていた
母のような心から認めてくれる存在を求めているのが伝わってくる
家族などのことはいっさい話題にせず、今の気持ちを良く聞くようにしていた
初めは少し太っていて腰が横に曲がっていたが、施設に慣れ自分自身を受け入れるようになると徐々に体もまっすぐになり痩せて自信がついてきたようだった
多感な時期を施設の共同生活で過ごすことが苦痛だったようで、精神病院に入院してから退所された
施設職員様からのソシエエステティック活動へのご感想
様々な事情から施設で暮らすことになった女性達は、支援を受けているとはいえ、 どこか満たされないものを抱えて過ごしています。
そのような中、プロのエステティシャンの先生方の施術を受けることは、最高に優雅に過ごせる大切なひとときであり、一人の女性に戻れるひとときでもあります。
ガチガチに全身緊張されているような方も施術後には筋肉の緊張はもちろん、気持ちまでも柔らかになったかのように穏やかな表情に見え、そんな様子をみると職員もとても嬉しく思います。
また、施術だけでなく、先生方の優しい言葉がけやコミュニケーションそのものに癒され、皆さんがエステの日を心待ちにされています。
これまで自分のからだを大切にしてこられなかった方も先生方の施術を通し、自分の身体の疲れを実感したり、自身をいたわることやケアする必要性を知ったりする、大変貴重な機会となっています。
2回にわたり、婦人保護施設での取組みについてご紹介させていただきました。
最後の「施設職員様からのご感想」に集約されていると思いますが、様々な事情で困難を抱えておられる方々に寄り添い、励まし、本来の自分を取り戻すお手伝いを行うというソシオエステの目的を実践されている素晴らしい事例だと思います。
医療や介護に限らず、ソシオエステの活躍できる分野は、幅広いことを知っていただけたのではないかと思います。
NPO法人ソシオの杜について
佐賀県・福岡県を中心に高齢者や障がいをお持ちの方、がんで闘病中の方など、いわゆる社会的弱者と呼ばれる方々に対して、「ソシオエステティック」という医療や福祉の知識とエステの技術を活用した施術を提供し「心と身体のケア」を行う活動を行っています。
昨年からのコロナ禍により「心と身体のケア」を必要とする方が増加しており、より多くの方に「ソシオエステティック」を知っていただくため、2021年7月に佐賀県佐賀市に「ソシオエステティック専門サロン 珠ちゃんサロン」をオープンし活動を本格化しています。
NPO法人ソシオの杜では、一緒に活動を行っていただける仲間を募集しています。
併せて、賛助会員としてNPO活動をご支援いただける会員様も募集しています。
少しでもご興味をお持ちいただきましたら、下記までお問合せいただきますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
- NPO法人ソシオの杜 理事長 江頭 裕美(えとう ゆみ)
- TEL:FAX 0952-31-1780
- E-mail socionomori@gmail.com
- HP(ソシオの杜) http://socio-m.com/
- HP(珠ちゃんサロン) https://tamasalon.jp/