皆さんこんにちは。
NPO法人ソシオの杜です。
今回は、1人の利用者に対して、12年間という長期間に渡る介入を行った事例についてご紹介いたします。
概要は以下のとおりです。
《場 所》 サロン
《頻 度》 2007年9月~2019年12月
《対象者》 70代女性
《内 容》 ①心のケア
②食事のアドバイス
③運動、呼吸のアドバイス
④住環境を考慮した日々のお手入れ
⑤化粧品の考察
⑥発疹リズムの考察
⑦リンパドレナージュによるトリートメント
目次
要旨
エステティックの現場ではクライアントの主訴が多岐にわたります。
様々な出会いの中、病院で傷つき、生きる意欲さえも失った状態で目の前に現れた女性Kさん。
私自身も不安の中、同時期にソシオエステティックを知り、その可能性を信じ、模索、考察、実践してきた事例を紹介します。
初見
- 脱毛が目立ち、頭皮は顔面同様の膿をもった座瘡がみられる
- 面皰は顔面から鎖骨下、耳全体と周囲、背面上部にまで至る
- 顔全体に火照りがある
- 顔のむくみがみられる
- 顔を上げることが出来ず「死にたいです。」と一言発語
皮膚炎悪化の経緯
- 2004年ペット樹脂素材のセーター着用により首周囲がかぶれる
- 皮膚科受診、漢方薬が処方されたが皮膚炎は顔全体に広がる
- 病院を変える。処方薬を1週間塗布したが、かぶれ部位は広がる
- 某美顔システムをもつサロンに変更、8か月が経過したが更に悪化
- 公立病院を受診、声掛けもないまま「これは酷い」と言われ8枚の写真を撮られる。
- 「一生治らない」とも言われ、通院中断
Kさんの紹介
- 昭和24年生まれ 女性 閉経
- 住環境・・・駿河湾に面した海浜地帯
- 仕事・・・・家具工場をご主人と共に営む。終日、木屑や塗料臭の中にいる
- 家族構成・・姑、夫、本人の3人暮らし
- 皮膚に伴う既往症として小学生から紫外線による皮膚炎を繰り返す
- アレルギー・金属、漆、鰹、しらす
- その他の既往歴・・・20年前、乳癌により右乳房全摘出・子宮筋腫
Kさんと向き合う
①心のケア
Kさんの苦しみに寄り添い、「待つ・提案・傾聴」というソシオエステティックの姿勢がベースとなる
- 得意料理、洋服、小物、趣味、地域のお祭り、子供や孫、学生時代の部活、草花、
- テレビ番組、山や海、天気など、話のきっかけ作りをする
- Kさんの体験と類似した自分の体験を話す
- 美しい風景などの写真を見せる
- ひたすら傾聴・そして同調
- Kさんに生きてもらいたい。その為に共同作業スタート
②食事のアドバイス
- 辛い物、アルコール、塩分、チョコレート、ナッツ類、揚げ物は控える
- VB類摂取の推奨
- ハーブティの紹介(杜仲茶・センナ茎エキス・ハブ茶・ハト麦)

③運動等のアドバイス(ホームケア)
- 肩コリの改善としてネックローテーション、ショルダーロ―テーションを中心に、関節をほぐす
- 腹式呼吸の薦め
- 良い睡眠を得る為の工夫を紹介(就寝時間・枕の高さ・精油の利用など)
④日々のお手入れ
- 紫外線対策の徹底(衣類・日焼け止めクリームの選択と使用)
- 工場内(エアコンなし)でのお手入れ
- 顔面に火照りや痒みを感じたら掻いたり擦ったりせず、冷タオルで冷やす
- 仕事の中間で洗顔、整肌、ファンデーションを塗布
- 帰宅後は速やかに洗顔、整肌
⑤化粧品の考察
「Kさんを苦しめている発疹、鎮まって!」
⇒「Be silent 」
⇒「美サイレント」と名付けました
ボディ用としてアビヤンガオイル・ピッタ用を処方
- オリーブ油
- ヒマワリ種子油
- スペアミント油
- ベルガモット果皮油
- ノバラ油
- トコフェロール ※発疹の出ていない箇所用
顔面用としてスクワランベースの敏感肌用クリームに小さな傷の治癒目的にアラントインを配合
- 2.5%配合では平行状態
- 5%配合で悪化
- 3%配合で改善
- 処方決定。
⑥発疹リズムの考察
2年が経過した頃、発疹にリズムがある事に気付き、毎日発疹状態を6カ月間、チェックしてもらう事にしました。既に閉経してましたが毎月同じような波で良好・悪化が繰り返されておりました。
⑦施術
考察された化粧品を使用。発疹の悪化が始まる前に施術日を設定。
リンパの流れを意識した施術を行う。
- ・カウンセリング 60分
- ・トリートメント 60分
- ・レストタイム 30分
- 時間配分は概ね上記だが、傾聴時間が大幅に延長されたり、「帰りたくない」と発語したり様々だった。状態の良い時はメイクまで行った。
- 使用化粧品の見直しを試み、アズレンを追加し経過を観た。状態改善。
- 薄紙を剥ぐように良くなり、明るさと笑いがみられるようになった。
まとめ
- ソシオエステティックの姿勢をベースに、ホリスティックに取り組んだ一例をあげました。
- 同じ事が誰にも適合するとは限りません。
- 長い経時の中でストレスの核となっていた事が解消された事も改善された要因の一つといえます。
- 個人とその日の状態に合わせ、考察、実践、時にはブレーキをかける勇気が必要でした。
- 施術は1週間に1度から始まり、月2回、月1回となり、10年以上が経過。
発症前より肌理の整った美肌を得て、2019年12月21日に卒業。
半年に1回、会う事を約束しました。
10年以上の期間をかけて、K さんに寄り添い、様々な考察を行いながら、皮膚炎の改善だけでなく、心のケアを行ってこられた経緯が良く分かる事例でありました。
出会った当初は「生きる意欲さえも失っている」ように見えたKさんが、美しい肌と明るさを取り戻しソシオエステティックを「卒業」することができるまで改善することができました。
私が何より素晴らしいと感じたのは、「卒業」して終わりではなく、「半年に1回会う約束」をなされていることです。
これこそソシオエステティックの本質であると思います。

NPO法人ソシオの杜について
佐賀県・福岡県を中心に高齢者や障がいをお持ちの方、がんで闘病中の方など、いわゆる社会的弱者と呼ばれる方々に対して、「ソシオエステティック」という医療や福祉の知識とエステの技術を活用した施術を提供し「心と身体のケア」を行う活動を行っています。
昨年からのコロナ禍により「心と身体のケア」を必要とする方が増加しており、より多くの方に「ソシオエステティック」を知っていただくため、2021年7月に佐賀県佐賀市に「ソシオエステティック専門サロン 珠ちゃんサロン」をオープンし活動を本格化しています。
NPO法人ソシオの杜では、一緒に活動を行っていただける仲間を募集しています。
併せて、賛助会員としてNPO活動をご支援いただける会員様も募集しています。
少しでもご興味をお持ちいただきましたら、下記までお問合せいただきますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
- NPO法人ソシオの杜 理事長 江頭 裕美(えとう ゆみ)
- TEL:FAX 0952-31-1780
- E-mail socionomori@gmail.com
- HP(ソシオの杜) https://socio-m.jp/
- HP(珠ちゃんサロン) https://tamasalon.jp/